ルネイムでは企業のデジタルマーケティングを支援する中で、製品サイト/サービスサイトやLP等を制作する機会も多く、マーケティング戦略の立案・制作・運用実務を一手に担うプロジェクトが多々あります。最近では、コーポレートサイトに関する相談も増え、中には上場企業のコーポレートサイトリニューアルに携わることも増えました。
しかし、多くの企業がリニューアルの目的をブランディング・企業理念との整合・トレンドを交えたデザイン等、具体性が無く漠然としたプロジェクト目的が背景にあると感じています。そうして着手した過去のリニューアルのことをヒアリングすると、完成したサイトのコンテンツやリニューアル後の運用面に課題を抱えている企業が非常に多いことが分かりました。
そこで本記事では、私たちが上場企業のコーポレートサイトリニューアルへ携わる際に意識していることや、運用時を見据えた取り組みの大切さを改めてお伝えしています。今後、リニューアルを検討している企業担当者さまの参考となれば幸いです。
なお、本記事におけるポイントは下記の通りです。
- コーポレートサイトのメインターゲットを定め、役割を果たすコンテンツを掲載する
- 部門横断運用を見据えたリニューアル実施が大切
- プロジェクト責任者の人選はリニューアルするサイトの完成度に直結する
- IRサイトランキング評価基準を意識してリニューアル計画を立案する
- IRサイト制作に強い制作会社への依頼がおすすめ
上場企業におけるコーポレートサイトの役割
まず、上場企業におけるコーポレートサイトの役割について整理します。
コーポレートサイトとは本来、企業が運営する全てのサイトの総称ですが、その役割は企業規模や事業規模に応じて異なります
例えば、私たちルネイムのコーポレートサイトは顧客獲得を最大の目的としているため、会社案内よりもサービスに関するコンテンツが主体です。一方で、本記事のテーマである上場企業のコーポレートサイトは明確なコンバージョンポイントを置かず、IR情報やCSR等、会社案内としての性質が強い傾向があります。
上場企業のように社会的影響力が強い企業の場合、顧客・株主・投資家・社員・求職者・国や自治体等の行政・パートナー企業など、多くのステークホルダーがコーポレートサイトを訪問します。それら全てに対して十分なコンテンツを掲載するのが理想ではありますが、制作工数・予算・運用利便性などを考慮すると現実的ではありません。
そこで多くの場合、コーポレートサイトの中で、どのステークホルダーをターゲットと定めるかが重要です。
例えば、顧客をターゲットとする場合は製品サイト/サービスサイト、求職者をターゲットとする場合は採用サイトのように、切り分けられるステークホルダーであれば、コーポレートサイトの中での優先度は低くなるでしょう。
このような理由で、前述の通り、IR情報やCSR等のコンテンツが主体になることが、上場企業コーポレートサイトの一般的な『型』となります。この前提を無視して思いつく限り詰め込みすぎると、コンテンツが整理されていない乱雑な印象をユーザーへ与えてしまう可能性があるので注意が必要です。
なお、以前はコーポレートサイトとIRサイトは別サイトとして運営していることが多かったですが、近年はコーポレートサイトの中へIRページを設けるスタイルがスタンダードとなっていることから、ルネイムでは、『上場企業のコーポレートサイト=IRサイト』と定義しており、制作方針やサイト設計に反映しています。
IRページ運用における課題
冒頭でお伝えしたように、コーポレートサイトに関するアンケートを実施すると多くの部門・各担当者の中で運用面における課題を抱えていることが多いです。特に運用利便性観点での課題が目立ち、その原因はリニューアル後の運用を見据えないで実施されたことによるものが多いと感じています。
一例をあげると、IR部門が抱える課題として『公開前情報の漏洩に対する懸念』『情報更新作業の負荷』です。
※ここでのIR部門は、独立部門の他に、他部門内に設置されたIRチームも含まれます(IR部門のポジションは企業によって異なるため)
IR部門では株主・投資家向けにIRトピック(決算報告書・決算短信など)や財務情報・業績ハイライトなどの定期的な更新を実施します。IRページは掲載情報の正確性が特に求められるため、アップロードファイルの選択ミスや数字の入力ミスが絶対に許されません。
また、CMS等の設定ミスで一般公開前に情報や資料が漏洩することは重大な過失とみなされ、場合によっては大きな責任を問われる可能性があります。過去に担当した企業では、部門内での度重なる確認作業が発生し、業務的負担・精神的負担が重大な問題となっていました。
これらを防ぐために、セキュリティ対策も万全でIR特化のCMSやツールを導入する企業が増えています。IRページ運用の効率化とセキュリティ面の安全性に課題を抱える企業の場合、これらの課題解決は必ずスコープ内に入れる必要があるでしょう。
なお、プロネクサス社・宝印刷社・マジカルポケット社が上記のソリューションを提供していますので、導入を検討したい企業は問い合わせてみてください。
部門横断での運用を見据えたリニューアル実施が重要
前項ではIRページにフォーカスしましたが、他にも事業紹介・CSR/サステナビリティ・会社紹介などのページがコーポレートサイトには存在します。
中小企業の場合はWebサイトを管理するチームがいずれかの部門内に設けられ、コーポレートサイトを含む運営サイトの管理を一手に担うことも多いですが、上場企業の場合は、各ページの役割や特性に基づいて、IR部門のほか、広報部門・CSR部門・経営企画室など、部門横断で運用します。
※日本ではCSR部門として独立しているケースが少なく、部門の中の1グループとして設置されていることが多いです
各部門が同じWebサイトの担当セクションをそれぞれ管理するため、予め運用ルールを定義しておかなければ、トーン&マナーの崩壊やコンテンツ指針との乖離等を招くことになります。
また、複数のユーザーが運用に関わるため、アカウントの扱い方や保守管理体制なども明確に定義する必要があります。
リニューアルのタイミングで関与部門へのアンケートを実施し、現状サイトへの不満や運用利便性の観点から見た意見を整理しましょう。着手時から部門横断運用を見据えてのリニューアル計画立案が不可欠です。
プロジェクト責任者の人選
上場企業のコーポレートサイトは、少なくても数百〜多いと数万ページを超えるものもあります。いずれにしても大規模サイトの部類に属するため、前提として情報設計に長けた人材でなければプロジェクト責任者は務まりません。
特に大規模サイトは運営歴が長く、継ぎ足し式でページ/機能追加を重ねてきたサイトも多いことから、全容を把握するだけでも相当な時間を要します。
さらに、多部門の意見を取りまとめてリニューアルを担当する制作会社と協議し、新サイトへ反映させなければなりません。サービス/製品サイトであれば、マーケティング部門・営業部門・製品開発部門のみであることも一般的ですが、社内のほとんどの部門が関与する点が上場企業コーポレートサイトの難しいところです。
社内推進力があり、かつ社内の各部門に顔が利く責任者が必須で、多少Webに詳しいというだけでプロジェクト責任者を選定するのは最も良くない人選です。
ここまでを含め、プロジェクト責任者には下記のような人材が好ましいでしょう。
- 情報設計に長けている
- 社内推進力がある
- 社内の各部門に顔が利く
- 現行サイトの仕様を多少なりとも把握している
- 制作会社の提案を鵜呑みにしない
- 自社の経営戦略、事業戦略、マーケティング戦略、ブランド戦略を理解している
- Webで出来ることと出来ないことの区別が出来る…等
当該に限ったことではありませんが、プロジェクト責任者の人選はサイトの完成度に直結します。上記の各項目を参考として、適切に人選しましょう。
IRサイトランキングの評価基準
IRサイトランキングとは、IRサイトを総合的に格付けする機関が毎年発表しているランキングで、主要なものは下記の3つです。
①Gomez「IRサイトランキング」
②大和IR「インターネットIR表彰」
③日興IR「全上場企業ホームページ充実度ランキング」
ランキングの順位を決める評価基準はそれぞれ異なりますが、いずれにしても「ユーザーにとってどんなサイトであるべきか」を定める評価基準のため、各評価基準から逆算して必要なコンテンツを整理し、サイトの機能や各セクションの仕様等を定めることを推奨します。
弊社でIRサイトリニューアルを担当する際も、上記ランキング順位をKPIの一つとして、評価基準を意識したリニューアル計画を立案しています。各機関の評価基準は上記リンクから確認できますのであわせてご覧ください。
上場企業のコーポレートサイト(IRサイト)制作に強い会社とは
餅は餅屋と言うように、どの分野にも専門家が存在し、Web制作会社の中にも、LP制作に強い・サービス/製品サイト制作に強い・ブランドサイト制作に強い・オウンドメディア制作に強い等、得意分野が異なります。
当然、「IRサイト制作に強い」制作会社もありますが、上記と比較するとその数は少ないです。ここまでお伝えしたように、IRサイトは様々な要件が絡み合う複雑なサイトかつボリュームもあるため、経験豊富で、プロジェクトマネジメントに長けている会社でなければ受けられません。
また、上場企業のコーポレートサイトはWordPress等のオープンソース型CMSではなく有償型CMSを導入していることが多いため、それらの扱いに慣れている制作会社でなければ、CMSの仕様を把握するところから始めることになります。
ここまでのことを考慮すると、Web制作会社の中でも「IRサイトに強い」を明確に打ち出していたり、IRサイトの制作経験がそれなりにあるところへ依頼するのが好ましいです。
一例として、コミカミノルタ社はIRサイト制作に特化したサービスを提供しており、実績も豊富です。企画/設計・制作はもちろん、運用時のサポート等、IRサイトに関するあらゆるニーズに対応しています。
自社のコーポレートサイト(IRサイト)が、前述のIRサイトランキングで多数の受賞歴があり、そのノウハウをサービスへ反映しているため、現実的なリニューアル計画の提案をもらえるでしょう。
さいごに
IRサイトは、サービス/製品サイトやオウンドメディア等の顧客をターゲットとしたWebサイトではないため、適切な考え方について語られることは多くありません。仮にそのような言及がされているコンテンツを見ると、ほとんど同じ会社が発信している場合が多いです。
IRサイトのメインターゲットである株主や投資家は、他社のIRサイトも頻繁に閲覧することが予想されるため、他社と明らかに異なるUIはユーザーにとって見づらいだけとなってしまいます。独自性よりも汎用性が重視されるのです。
IRサイトならではの問題や考慮すべき事項が多数存在しますが、IRサイトの制作経験が豊富な専門家の力を借りながら、本記事でお伝えしたことを参考にして進めていただけますと幸いです。
なお、手前味噌ではありますが、私たちルネイムはマーケティング支援会社でありながら、IRサイトの制作経験もある珍しい会社ではないかと思っています。厳密に言えばIRサイト制作単体で相談をいただくと言うよりも、マーケティング支援の一環で携わるケースです。
つまり、事業戦略やマーケティング戦略を予め理解した上でIRサイト制作に着手できる点は大きな強みだと考えています。その企業が伝えたいこと・他の運営サイトとの住み分けなど、本来ならば一からディレクションが必要なことも、既に把握しているため、他社と比較すると初動の企画/設計段階がスムーズに進みやすいです。
マーケティングに関する課題とあわせて、コーポレートサイト(IRサイト)のリニューアルを検討されている企業さまは、お気軽にご相談ください。