仕事の性質上、マーケティングに課題を抱える企業の担当者さまとお話しする機会が多いのですが、前職時代(事業会社のマーケティング部門マネージャー)のことを思い出すことがあります。
私自身、多くの失敗を経験してきたが故に、「マーケティングがうまくいかない」「新しい取り組みで失敗することが多い」とお悩みの企業に共通する特徴が段々と分かるようになりました。
しかし、失敗が全て「悪」かというと、そうとは言い切れません。実際に、失敗経験が後々役立つこともあり、失敗から学ぶものは多い一方で、予算と時間をかける事業活動において、「不必要な失敗は避けたい」というのが本音ではないでしょうか。少なくとも、自ら意図的に失敗へ突き進む人はいません。
特に、組織レベルの失敗は経営全体に波及する場合もあるため、経営層やマネジメント層はその恐怖と常に戦いながら事業を展開しています。
そこで本記事では、マーケティングで失敗する組織に共通する特徴を、私の経験談を踏まえて6つ紹介したいと思います。これからご紹介する6つの特徴が「自社に当てはまっていないか」をチェックするとともに、現状の組織(チーム)問題解決の参考となれば嬉しいです。
本記事は下記に該当する方に、是非ご覧いただきたい内容となっています。
- 競合に負けている、追いつけないで悩んでいる
- チームメンバーのマネジメントがうまくいかない、またはメンバーが育たない
- 実施した多くの施策で成果を出せず、打ち切りになったことが何度もある
- 外部マーケティングパートナーとの連携が悪い
1. リーダーがコミットしない
これはマーケティングに限った話ではありませんが、リーダーがコミットしない組織は何をやるにしても失敗する可能性が非常に高いです。
マーケティングは全社的に重要な取り組みの一つであるが故に、経営層やリーダーのコミットによって現場の士気は大きく異なります。精神論のように聞こえるかもしれませんが、実際の現場ではとても重要なことです。
よくあるのは、実施の意思決定を下しておきながらその後はノータッチで、現場から上がってきたレポート内の数値や投下した予算に対する言及が先行してしまうケースです。この場合、コンテンツマーケティングのような中長期型施策は、まず続かないと思った方が良いでしょう。
検索広告のように比較的短期で成果を出しやすい施策であっても、どこかのタイミングで頭打ち状態となった時に、その原因を解明しようともせず、解決策がないまま運用を継続するか、「成果が出なくなった」と言って闇雲にストップするなどの行動に至りやすい組織の特徴でもあります。
また、このような組織ではなかなか現場のメンバーが育ちません。企業規模によって組織構成が異なるため、コミットする人が必ずしも経営層である必要はありませんが、事業部長クラスのマネジメント層のコミットは必須でしょう。
コミットの仕方は様々ですが、主に下記が挙げられます。
- ブログの記事執筆を自ら行って背中を見せる
- 適切な評価制度を整備する
- 社内ナレッジ共有の仕組みを構築する
- 現場の課題に対して解決策を一緒に模索する
- 経営会議の場でマーケティングに関する報告と今後の方針を議題にあげる
- 陣頭に立ってマーケティング予算を交渉する
- 各取り組みを実施しやすくするために社内調整を日頃から行う
- 結果だけでなくプロセスにも着眼する
- 自身でも積極的に情報収集する
- 広告代理店や支援会社との打ち合わせには極力出席する
マーケティングで成果を出している企業は必ずと言って良いほどリーダーがコミットし、自らが全社を巻き込んで推進しています。だからこそメンバーが育ち、文化として根付き、組織的にマーケティングで成功している企業として外部から認められるのではないでしょうか。
2. 部門間の連携不足
部門間の連携不足問題を抱えている企業は多いです。マーケティング部門と営業部門は仲が悪い企業や、マーケティング部門の取り組みに他部門が非協力的な企業など、縦割り文化が根強い企業にしばしば見受けられます。
売上・利益率・顧客満足度の向上など、企業として同じ目標に向かってはいるものの、設定されるゴールは部門ごとに異なり、業務フローや考え方も様々なため、ある程度は仕方ないことなのかもしれません。
しかし、マーケティングで成果を出すためには他部門の協力は欠かすことのできないものであり、優れたマーケターはその重要性を理解しています。そのため日頃から、他部門のキープレイヤーとコミュニケーションをとり、マーケティング部門としての取り組みを実施しやすくしているのです。
例えば、顧客へのインタビューを検討しても、営業担当者の協力を得られなければ実施することはできないですし、自社製品に関するコンテンツを作るためには製品の特徴について把握する必要がありますが、開発部門との連携がとれていなければアップデート情報など、鮮度の良い情報のインプットが遅くなってしまいます。
このような事態にならないよう、マーケティング部門としては他部門とのコミュニケーションを積極的に図るべきです。他部門のゴールや、業務フローなどを理解するように努め、時間がかかるかもしれませんが日々の積み重ねで信頼を構築していきましょう。
3. 何事も手段から議論が始まる
マーケティングには数多くの施策があります。ここで言う手段とは、それら施策のことを指しますが、マーケティングで失敗する企業は、手段から議論が始まってしまうことが多い印象です。
「オウンドメディアを始めてみよう」「SNSでの情報発信ってどう?」「最近はこういったプロモーションが増えている」など、手段に関する議論は盛り上がりますし、アイデアが出やすくもあるため、一見、良い議論のように思えます。
しかし、手段から始まった議論の末に下した意思決定は、失敗に終わる危険性が非常に高いです。この意思決定はアイデアが先行し、本質的ではありません。自社の戦況を見極めた上で届ける手段(施策)を選定しなければ、成果までの距離を縮めることは難しいでしょう。
この手の話になると、戦略と戦術の違いについて語られることが多いです。今更感はありますが、改めて戦略と戦術の違いについて整理してみます。両者の違いを簡潔にまとめると「戦略は目的を果たすために取り決める方向性、戦術は戦略を行動化したもの」です。
例えば、今働いているA社とは業種が異なるB社で働きたい思いがあるとします。この場合、目的がB社への入社で、この目的を達成するための戦略を考えなければなりません。
B社へ入社するためには、当然ながら採用試験や面接を通過しなければならないため、「エントリーまでに業界のことを理解する」という戦略の一つが浮かびます。この戦略に沿って、「検索やSNSで情報収集する」「B社と同じ業界で働く人に話を聞く」「B社の社員のSNSアカウントをチェックする」「インプットした情報を言語化する」などの戦術が生まれるのです。
上記を整理するとこのようになります。
目的:B社へ入社
戦略:エントリーまでに業界のことを理解する
戦術:①検索やSNSで情報収集②B社と同じ業界で働く人に話を聞く③B社の社員のSNSアカウントをチェック④インプットした情報を言語化して整理
目的や戦略は一つですが、戦術は複数あっても良いものです。
話を戻すと、戦術となる手段から始まる議論は、目的や戦略が抜けているため、その手段が正しいものかの判断ができない危険な状態であることを意味します。
「〇〇という手段を用いてこの目的を達成しよう」ではなく、「この目的を達成するためにこの戦略をたて、これらの戦術(手段)を用いよう」のように、目的から逆算してアクションを定義するように心がけましょう。
4. 完全な丸投げ思考
広告であれば広告代理店、オウンドメディアやSNSであればそれらの運用を得意とする支援会社など、実施するマーケティング施策によっては、業務の外部委託を検討するかと思います。
この場合、社内に運用できるメンバーがいなかったり、リソース不足などの背景がありますが、「1〜10全ての業務を外部委託すれば結果が出る」と思い込んでいる企業が、実は一定数存在するのです。
私たちルネイムも企業のマーケティング活動を支援させていただく立場だからこそ都合良く聞こえるかもしれませんが、広告代理店や支援会社を頼ること自体が問題ではありません。企業によっては専門家を頼ることが最良の選択な場合もあります。
しかし、前述のように思い込んでいる企業からご相談をいただいてもお断りしており、多くの広告代理店や支援会社も恐らく同様です。仮にそのような企業から依頼を受け、実際にプロジェクトが立ち上がったとしても、高確率で失敗することを私たち自身がよく知っています。
当たり前のことですが、自社のマーケティング活動を全て外部に任せ、結果の数字しか見ようとしない企業のマーケティングは本質的ではありません。評価するのは結果だとしても、そこまでのプロセスや様々な試行錯誤があってこそ最適化を目指せるものです。
広告代理店や支援会社を専門家を頼るとしても、積極的に自分たちも関与し、掲げた目標に対して一緒に取り組んでこそのパートナーではないでしょうか。
実は私自身、前職時代に同じ失敗をしてしまった経験があります。
その時は、どうしても社内のリソースを割くことができず、私自身も膨大な量の業務を抱えていたため、窓口となる担当者や外部の支援会社に任せっきりで、ある施策を進めてしまったのです。そのようなスタンスが故に、当然うまくいかず、その後の巻き取りや立て直しが大変だったことを覚えています。
当時の部下はもちろんですが、支援会社の担当者にも申し訳なかったと深く反省しています。このような失敗経験があるからこそ、安易な丸投げは悪手でしかなく、「適切な依頼の仕方をするべき」と強く思っているのです。
5. いきなり大きく始めてしまう
どれだけ戦略性のある実施計画を立てたとしても、最初から大きな予算・リソースをかけて進めるのは非常に危険です。
万が一、うまくいかなかった際の予算や時間が無駄になってしまうリスクも理由の一つではありますが、軌道修正の判断が正確にできないことの方が大きな問題です。
ある程度の予算とリソースをかけた手前、容易に方針の変更がしづらいのも理解できますが、それではうまくいかなかった時の無駄が雪だるま式に増えてしまいます。
方針変更に伴う様々なリスクを極力回避するためにも、最初は小さく始めて、明確に勝ち筋が見えてからの予算・リソースを集中する戦略の方が良いでしょう。
例えば、検索広告を実施する場合、最初は数十万円程度の予算で始め、コンバージョンにつながるキーワードを大方把握できてから本格的に予算を投下したり、オウンドメディアを立ち上げる前にコーポレートサイトやマーケティングサイトのブログ記事を内製で更新するなどが有効です。
規模を大きくすることは状況次第でやりやすい一方で、規模の縮小や大きな方針変更は難しいため、どんなことでも小さく始め、戦況を見極めながら拡大していくことをおすすめします。
6. 意思決定スピードが遅い
判断が慎重なこと自体は悪いことではありません。先を見ず、安易に判断して失敗することに比べればリスク回避の観点で、必要なスタンスだと思います。しかし、極端に意思決定スピードが遅いのも問題です。
現場では常に「どうすれば今より成果を出せるか」を模索しています。その中で、新しい取り組みを経営層へ提案する社内プレゼンの場面がありますが、現場としては、承認される・されないを問わず、極力早めに結論をもらいたいと思っています。
承認されればいち早く実施に向けたオペレーションの組み立てに移行したいですし、仮に承認されなかったとしても、規模を縮小した企画での打診など、次の一手を検討したいはずです。
そうした現場の思いとは裏腹に、いつまで経っても結論が出ない経営層の姿勢が続けば、現場からの社内プレゼン自体が消極的になってしまう可能性も十分に考えられるでしょう。
また、意思決定スピードと並んで、稟議申請や承認業務などのワークフローが遅いのも問題です。
もちろん、企業として必要な業務工程であることは前提ですが、「何でこんなに時間かかるの?」と感じている現場の方もいると思います。
前述の「早く結論が欲しい」と同様に、ワークフローが早ければ、現場側の時間が逼迫することはありません。一方で、ワークフローが遅いと、現場としても身動きがとれないため、承認されたとしてもスケジュールなどの実施計画自体を見直さなければならない可能性も出てきます。
これらのことを踏まえると、経営陣は以下の点について意識すべきでしょう。
- 現場からの社内プレゼンは積極的に役員会議や経営会議等で協議する
- 社内プレゼンの内容に対する検討期間を定めて、前もって現場へ伝える
- マーケティングの担当役員を適任者に任命し、現場の声を拾いやすくする
- 経営層と現場責任者間の連携を強め、稟議ステータスを共有する
- 稟議申請や承認業務を電子化してスムーズに進める
さいごに
マーケティングで成果を出すための要因は様々ですが、その一つに組織が含まれることは間違いありません。優秀なマーケターが在籍していても、活かせる組織でなければ、その能力を最大限引き出すことは難しいでしょう。
冒頭でもお伝えしましたが、私自身が本記事で紹介した各特徴も含めて、多くの失敗を経験した一人です。本記事を執筆しながらも、「私が偉そうにこんなことを言って良いのだろうか」と何度も自問自答しながら執筆した記事でもあります。
しかし、失敗してきたからこそ伝えられるとも思っており、本記事で紹介したことは企業の規模や業界を問わず、どんな組織でも陥る可能性があります。これからマーケティング部門を立ち上げる企業や、立て直しを図ろうと奮闘している企業の参考となれば嬉しいかぎりです。
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