コンテンツマーケティングの定義
まずはじめに、コンテンツマーケティングの定義についてお伝えさせていただきます。 コンテンツマーケティングはアメリカでは2000年代、日本では2010年頃からオンラインでのマーケティング活動が盛んになったことで注目されています。
Content Marketing Institute では、コンテンツマーケティングを以下のように定義しています。
Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action. 【和訳】コンテンツマーケティングは、価値、関連性、一貫性のあるコンテンツを作成して配信することに重点を置いた戦略的マーケティングアプローチ。明確に定義されたユーザーを引きつけて維持し、最終的には収益性の高い顧客行動を促進する手法。
参照:What Is Content Marketing?
上記を見る限り、特定のコンテンツや発信方法については明言していないことから『コンテンツマーケティング=コンテンツの種類や発信方法を限定するものではなく、見込み顧客にとって高価値な情報そのものがコンテンツであり、あらゆるフォーマット・発信方法を駆使して見込み顧客へ届ける 包括的なマーケティング手法』と、弊社では定義しています。
この定義を図で表すと下記のようになります。
コンテンツの届け方には、SEOやSNSだけではなく広告も含まれています。広告と聞くとアウトバウンド型マーケティング施策の代表格ですので「コンテンツマーケティングには含まれないのではないか?」と、疑問に思う方もいるでしょう。
しかし、アウトバウンド型のように、サービス/製品(商品)紹介のトピックのみを企業主導で告知することと違い、見込み顧客が知りたい情報をコンテンツにして届ける点が、コンテンツマーケティングにおける広告施策です。ここでの広告は主にデジタルがメインで、ホワイトペーパーを活用した施策が代表例でしょう。
改めてお伝えしますが、『コンテンツマーケティング=見込み顧客が求める情報のコンテンツ化を前提 として、数多のフォーマット・発信方法を駆使して見込み顧客へ届ける包括的なマーケティング手法』と認識した上で、この後の解説をご覧いただければと思います。
コンテンツマーケティングが注目された背景
次に、コンテンツマーケティングが注目された背景について解説します。 「なぜ多くの企業がコンテンツマーケティングに取り組むのか?」「コンテンツマーケティングで得られることは?」を理解することで、これからコンテンツマーケティングを始めたいと考えている方も、その目的や打ち手について整理することができると思います。
プッシュ型からプル型へ
コンテンツマーケティングが注目された理由にはプッシュ型の限界、そしてプル型施策の多様化が大きな要因となっています。下記にプッシュ型・プル型の営業/マーケティング施策を抜粋して掲載しています。
マーケティングにおけるプッシュ型施策は従来の定番手法とされてきましたが、デジタルの普及に伴い見込み顧客の行動も多様化しています。プッシュ型施策だけでは追いきれないことに加えて、企業からのアプローチに対してネガティブな印象を持つ人も少なくありません。
プル型施策の筆頭であるコンテンツマーケティングは、デジタルとの相性が良い 上に、前述の通り、見込み顧客が知りたい情報をコンテンツ化するので、プッシュ型施策同様に企業からのメッセージだとしても、情報に対する価値を感じやすい傾向があります。
また、プッシュ型施策の中でもテレビ・新聞・雑誌などは、自社管理ではないメディアの中で展開しますが、プル型施策は自社サイト・SNSなど自社管理のメディアで展開する手法ですので、費用を抑えて取り組み始めることが可能です。
デジタルの普及によって、見込み顧客自身も能動的に情報収集を行うようになり、与えられた情報ではなく自身で探し当てた情報起点で購買検討を始められるので、成約率の向上も見込むことが出来ます。
しかし、プッシュ型施策が全く効果がないわけではありません。認知拡大を図る上でテレビCMほどの媒体はないですしBtoBでは定番のテレアポも、今でも一定の効果は得られるでしょう。 重要なのは、プッシュ型・プル型それぞれの特性と得られる効果を正しく理解して、自社マーケティングプランを組み立てることです。
同じコンテンツマーケティングでも、発信するコンテンツの種類は多種多様ですので、取り組めるものとそうでないものを明確に選別して取り組まなければ場当たり的となってしまい、コンテンツマーケティングの効果を最大化させることは難しいでしょう。
巨大集客チャネル「検索エンジン」の活用
コンテンツマーケティングは検索エンジンとの相性が非常に良いとされています。その理由は、記事コンテンツ発信によって、検索エンジンから自社サイトへ見込み顧客の流入を図れる点です。
前述の通り、見込み顧客が能動的に情報収集を行うようになりましたが、ここで情報収集を行うチャネルの筆頭が検索エンジンです。日本ではGoogle・Yahoo!などの検索エンジン上に存在する数多の情報の中から、課題解決に繋がりそうな情報や知りたい情報を探す情報探索行動が盛んに行われています。
近年はSNSでの情報収集も活発になっていますが、それでも検索エンジンに勝る情報収集ツールは今のところ存在しないでしょう。
ユーザーの検索意図を汲み取り、課題解決に貢献できる質の高いコンテンツ発信を継続することで、検索エンジンに好影響を及ぼします。所謂コンテンツSEOと呼ばれる施策ですが「コンテンツSEO=コンテンツマーケティング」ではなく、コンテンツマーケティングの戦術の一つ としてコンテンツSEOが用いられる、と認識してください。
これらの取り組みによって検索結果の上位表示を実現することが出来れば、自社サイトのアクセス数を伸ばせる可能性が高まり、結果的に、流入したユーザーをコンバージョン(Webサイト上の目標:お問い合わせや資料請求など)へ繋げることが出来るでしょう。
アクセス数増加が必ずしもコンバージョン数増加へ繋がるわけではありませんが、見込み顧客が自社サイトを訪問することで、自社のサービス/製品(商品)を知ってもらうキッカケを作ることが可能です。
まずは、ユーザーに自社サイトを閲覧してもらう環境を構築することは、Webサイトでの集客を図る上で重要課題の一つであり、コンテンツマーケティング全体の成果にも繋がる要因ではないでしょうか。コンテンツマーケティング×検索エンジンについては下記の記事でもご紹介しています。
自社の文化に共感する顧客の獲得
コンテンツマーケティングは、見込み顧客との接点を創出するリードジェネレーションだけではなく、リードナーチャリングと呼ばれる見込み顧客の育成も図れるマーケティング手法です。更に、購入後のファン化も含めて行える包括性は、コンテンツマーケティングならではの特性とも言えます。
特にBtoBは検討期間が長期化する傾向があり、一回の接点だけで受注まで至る確率は限りなくゼロに近いため、コンテンツマーケティングの特性を活かしたマーケティング・セールスプランを組み立てる企業が増えています。
発信したコンテンツと見込み顧客が繋がったことをキッカケに、見込み顧客とコンテンツを介したコミュニケーションが開始します。そのコンテンツにはサービス/製品に関するノウハウや独自の見解が含まれており、そのコンテンツを「価値あるコンテンツである」と評価した見込み顧客は、サービス/製品(商品)だけではなく、企業の文化・考え方にも興味を示すでしょう。
例えば、過去に資料請求歴がある見込み顧客に対して、サービス/製品(商品)の導入事例集をメールで送付したり、見込み顧客が抱えているであろう課題向けのクローズド型ウェビナーを企画して招待するなど、見込み顧客が関心のあるトピックをコンテンツ化してコミュニケーションを継続します。
この取り組みにより、自社の存在を記憶してもらうだけでなく、「なぜこのコンテンツを届けるのか」「課題に対してこのように私たちは考えている」と明確に示して、見込み顧客の共感を得ることが出来れば、商談化率や受注率を高めることまで可能です。
一方、これらを実現するためには当然ながら見込み顧客を納得させるコンテンツ品質 でなければなりません。競合他社同様の内容や、表面的で中身の薄いコンテンツを提供してしまうと、かえって自社に対する印象が悪くなる可能性もあります。
コンテンツは常に研ぎ澄ませておき、万全の状態で送り出せる環境を整えた上でコンテンツマーケティングを展開する必要があります。
コンテンツマーケティング特有の課題
ここまでご覧いただいた方は、コンテンツマーケティングの概要や取り組むことで得られるメリットについてご理解いただけたかと思います。
しかし、コンテンツマーケティングにも特有の課題が存在し、多くの企業担当者やマーケターたちを悩ませています。そこで、コンテンツマーケティング特有の課題についてここからお伝えしますので、事前に懸念材料を把握した上で、それを補えるプラン立てを行うと良いでしょう。
短期間での成果は見込みにくい
コンテンツマーケティングはメリットの多いマーケティング手法ではありますが、成果が出るまでには一定の期間を要する中長期型施策ですので、短期での成果は見込みにくいことを念頭に置いて取り組み始めなければなりません。短期成果が見込みにくい=初期投資回収速度も遅いということです。
コンテンツマーケティングの成長曲線は比例グラフのような右肩上がりの直線ではなく、掛けた時間とコストの経過に対し、反比例のような曲線を描くケースが大半です。中長期型施策であるが故に、成果が出ない期間も忍耐強く運用していかなければならないため、初動のインパクトはある程度無視して取り組んだ方が良いでしょう。
また、コンテンツマーケティングは潜在層へのアプローチから顕在化を図る施策であるため、顕在化するまでコンテンツを届け続ける必要があります。見込み顧客のニーズを満たすコンテンツを多角的に積み上げる総力戦 のコンテンツマーケティングは、一朝一夕でどうにかなるものではありません。
これらの理由により、現場ではコンテンツマーケティングに取り組みたくても、社内プレゼン時に必ず議題に上がる問題ですので、経営層を説得することが困難であるという声もよく耳にします。
この場合は無理に予算確保に奔走するのではなく、ブログ更新などの比較的、予算が掛からない範囲で取り組み始めるのも一つの手段です。成果に繋がるまで時間がかかる、そもそも成果が出るか分からない中での予算交渉は経営層も判断がしづらいので、単に売上だけを求めるのではなく、ナレッジ共有や社員教育も兼ねて取り組むなど、複数の目的を持たせても良いかもしれません。
コンテンツ制作の労力
コンテンツマーケティングの成果を左右する最大の要因は、本記事内で何度もお伝えしてきた「コンテンツの質」です。どのフォーマット(種類)のコンテンツを発信するにしても、見込み顧客に満足してもらえる高品質のコンテンツ制作が最重要事項と言えるでしょう。
しかし、殆どの企業がマーケティング専門の部署やチームを持てるだけのリソース確保が難しいのが現状で、実務担当者は他の業務と兼務しながら進めることになります。その状況下で、見込み顧客が満足して、行動を後押し出来るほどのコンテンツ制作は簡単ではありません。
コンテンツ制作に関する失敗談として「コンテンツネタの枯渇」や「コンテンツ制作のリソース不足」などをよく耳にします。これらはコンテンツマーケティングに取り組む多くの企業が抱えており、弊社へご相談いただく企業担当者様からも頻繁にお伺いする悩みです。
コンテンツマーケティングを円滑に進めていくためには避けられない壁でもあり、これらをどう切り抜けるかは成果にも大きく影響するでしょう。そこで、特によく耳にする「コンテンツネタ確保」に関するお悩みについて、少しでもコンテンツのネタ探しが軽減できるよう、ネタが転がっているポイントを列挙していますので参考にしていただければと思います。
自社サービス/製品(商品)資料 過去の提案書 社内会議で使用したスライド 営業同行 商談時の顧客コメント 既存顧客のコメント 問い合わせメール 担当部署外の社員に相談(CSなど顧客との接点が多い部署)…など 新しくインプットした知見 アンケート結果 社内チャット…など
コンテンツマーケティングを実施する以上、コンテンツ制作とは向き合い続けなければなりません。しかし、日々の業務の中で数多く転がっているコンテンツのネタをうまく活用することで、コンテンツ制作時の負担軽減に繋がると、私は考えています。
コンテンツマーケティングの進め方
コンテンツマーケティングのアウトラインを把握するには「顧客の購買サイクル」と呼ばれる認知・購入・購入後における一連の流れと組み合わせると分かりやすいです。顧客の購買サイクルは下記の6段階で構成されています。
Awareness(認知):サービス/製品(商品)を認知 Interest(興味):サービス/製品(商品)に対する興味 Consider (検討):サービス/製品(商品)の購入を検討 Purchase(購入):サービス/製品(商品)を実際に購入 Repeat(継続):サービス/製品(商品)に満足して、再購入や継続利用 Advocacy(応援):企業のファンとなり、知人やSNSでのシェア
ここからは、顧客の購買サイクルと組み合わせたコンテンツマーケティングの進め方及び段階ごとに最適なコンテンツについてお伝えさせていただきます。
①アクセスを集める(認知)
購買サイクル内の「認知」段階では、その後のアクションへ繋げるためにも、企業やサービス/製品(商品)について知ってもらう必要がありますので、まずはWebサイトへのアクセスを集めることが最大の目的となります。
見込み顧客にコンテンツを届けて、そのコンテンツを気に入ってもらえれば、再訪へのキッカケ作りや興味醸成の下地を作ることが可能です。
ここでは、検索エンジン・SNSでのサイト流入を図ります。メインのコンテンツは記事コンテンツで、検索エンジン経由の場合、記事タイトルは対策キーワードを用いて構成し、高品質のコンテンツ制作にこだわることで対象キーワードの上位表示を図る、コンテンツSEOがメイン施策となります。
しかし「高品質のコンテンツ」や「良いコンテンツ」の定義は曖昧で、あくまでもコンテンツの良し悪しは個人評価となってしまいます。「良いコンテンツのジャッジ」は出来ても「良いコンテンツの制作方法」を明確に伝えられるマーケターは殆ど存在せず、私自身も例外ではありません。
それでも、良いコンテンツを制作する工夫を凝らすことは可能です。良いコンテンツの条件を満たす要因の一つが読後感 です。読み手に心地良い読後感を与えられるは良いコンテンツである可能性が高いと感じています。心地よい読後感を与えられる要素は以下のように列挙することが可能です。
抽象的ではなく、具体的に書く 事実を書き、エビデンスも添える 検索意図に整合するテーマを扱っている 取り扱いテーマに関する情報を網羅している 内容に独自性がある 読みやすい文章構成 文章だけで伝わりにくい場合は、写真/図解/図表を用いる 実体験に基づいた内容を書く 記事内で伝えたいことを明確にする…など
上記要素を満たせば必ず心地よい読後感を与えられるわけではなく、明確な達成指標が無いコンテンツ制作の難しさでもありますが、少しでも読み手の心を動かすための努力は惜しむべきではありません。常に創意工夫しながら、自社ならではのコンテンツスタイルを確立することもコンテンツマーケティングにおける重要ミッションの一つです。
また、制作した記事コンテンツをSNSで発信することでSNS経由の流入も図れますが、ある程度のフォロワーを獲得していることや日頃からSNS運用を継続していることが前提となりますので、ゼロからスタートの場合、SNS内でユーザーとの関係値が高まるまでは現実的に難しいでしょう。
これらをまとめると、認知段階では以下の進め方となります。
流入チャネルは検索エンジン・SNS メインは記事コンテンツ 徹底して良いコンテンツを作り込む SNSからも流入を図るために、日頃からユーザーとの関係値を高める
②見込み顧客に変える(興味・検討)
認知のあとは見込み顧客に変えるためのアクションを実行します。この段階では既に企業やサービス/製品(商品)を知っており、問い合わせや資料請求などの具体的な行動を起こしてもらうこと、つまりリード化が第一目標です。
ここで取るべきアクションは、記事コンテンツからのコンバージョン獲得やホワイトペーパーダウンロードを促す広告施策です。
認知段階で一定のアクセス数を確保できるようになれば、その分サイト内のコンテンツを閲覧してもらえます。記事の冒頭や末尾にCTA(コール・トゥ・アクション=訴求ボタン)を設置して、問い合わせや資料請求などを促すと良いでしょう。
ここでの注意点として、ただ漠然と「問い合わせはこちら」と記載するのではなく、記事のテーマに沿った文言でCTAを構成することです。ユーザーが、どのタイミングで行動を起こすかは予測できないので、常にコンバージョンへの最短距離を明確に設計しましょう。
また、ホワイトペーパーもリード獲得施策として有効です。ホワイトペーパーとは、サービス/製品(商品)に関連する諸情報をPDFファイル等で制作したもので、ダウンロードの際にメールアドレスや会社名を入力してもらいます。
Webサイトからのダウンロード以外に、広告も絡めることで多くのリード獲得を図ることが可能で、ホワイトペーパー×広告で配信する媒体は、Facebook広告が相性が良いです。ホワイトペーパー施策に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
問い合わせ・資料請求・ホワイトペーパーダウンロードで獲得した見込み顧客に対して、サービス/製品(商品)を本格的に検討してもらう段階では、メルマガが有効です。ここでは記事コンテンツ・ホワイトペーパー・クローズド型のウェビナーなどを用います。
記事コンテンツ同様、ホワイトペーパーやウェビナーも徹底してコンテンツの質を追求してください。前述の通り、ありきたりな切り口や内容が薄いと、逆に自社への興味が薄れて見込み顧客が離れる要因になりかねません。
「こんなコンテンツが無料で良いの?」と見込み顧客が感動するほどのコンテンツを提供できて、初めて見込み顧客が自社に対して、心から興味を持ってくれていると言えるでしょう。また、その興味が競合と比較して、自社優位で検討 してくれることへ繋がります。
ここまでをまとめると、興味・検討段階では以下の進め方となります。
アクセス数が集まるようになったら、ユーザーのリード化を図る リード化施策は、記事コンテンツ及びホワイトペーパーを活用する 獲得した見込み顧客へメルマガでコンテンツを届ける 徹底して有料級のコンテンツを制作・提供して、見込み顧客を驚かせる
③新規顧客化(購入)
①・②で良いコンテンツを提供し続けることが出来れば、見込み顧客は確実に好印象を持っているでしょう。この段階では、実際に契約(購入)へと繋がるアクションの実行です。
お客様の声や実績などをまとめた事例集などの、検討意欲を後押しするコンテンツを提供した後に、満を辞して商談引き上げを図ります。
ここまでの工程で提供したコンテンツに満足している見込み顧客であれば、ゼロから関係を構築するプッシュ型と比較して数段、企業に対して好感を持っていることが予想されるので、営業ハードルが一定以上は上がらず、成約率向上も十分に図ることが可能です。
この一連の流れを実現することが、コンテンツマーケティングによるリード創出から契約(購入)までの勝ちパターン と言えるでしょう。費用や納期等の絶対条件はもちろん重要ですが、見込み顧客に対する献身的な姿勢やコンテンツを出し惜しみしないことで、情緒要件を満たすこともコンテンツマーケティングの大きなメリットです。
ここまでをまとめると、購入段階では以下の進め方となります。
コンテンツコミュニケーションにより関係値が高まった見込み顧客へ、検討意欲を後押しする事例集などのコンテンツを提供 タイミングを見て商談化、クロージング
④優良顧客化(継続・応援)
③で契約(購入)した新規顧客の継続利用やリピート購入・紹介などの優良顧客化を図る段階では、第一に提供するサービス内容に対して顧客が満足していることが前提となります。
これまで届けてきたコンテンツに対する期待を裏切らないサービス品質を保ち、フロント担当者との電話やメール(チャット)でのコミュニケーションを重ねて信頼を固めていくことが、優良顧客化への最短距離です。
信頼を獲得することで、自ずと継続利用やリピート購入が実現し、自社のサービス/製品(商品)を紹介してくれます。①〜③では特にコンテンツを介したコミュニケーションがメインでしたが、商談以降はコンテンツを介さないコミュニケーションも台頭します。
企業やサービス/製品(商品)を信じてくれた顧客の期待を超えるサービスを提供して、「この会社と契約して良かった」 と思ってもらうことこそがコンテンツマーケティングでの成功例であり、全てのビジネスのあるべき姿ではないでしょうか。
ここまでをまとめると、継続・応援段階では以下の進め方となります。
顧客の期待を裏切らないサービスを提供 顧客限定のメルマガ送信 理念や文化を訴求するコンテンツを提供
コンテンツマーケティングを始めるための準備
ここからは、実際にコンテンツマーケティングを始めるための準備段階で行うアクションをご紹介します。コンテンツマーケティングで成功するためには相応の準備を行い、万全の状態で取り組み始めなければなりません。
本セクションはこれからコンテンツマーケティングに取り組む責任者クラス向けの内容ですが、経営層や各担当者の方も必要な準備について把握出来ますので、是非ご覧ください。
①明確なゴールを定める
コンテンツマーケティングで成果を上げるためには、成果指標を明確に定めてチーム全体で共通認識を持つことから始まります。
成果指標にはKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)があり、KGIには具体的な売上目標を定めることが一般的です。例えば、現状での月間リード獲得数・商談化率・受注率・利益率を算出し、コンテンツマーケティングによって定める適切なKGIを、営業や経営層と協議を重ねてすり合わせましょう。
そして、KGIを達成するための中間目標としてKPIを定めます。KGIで定めた売上目標から逆算して、必要なリード数・商談数などを想定します。運用初期段階ではWebサイトのアクセス数が少ないことが多いので、月間ユーザー数やPV数などのKPIを立てても良いでしょう。
上記はKPIツリー例ですが、KPIはフェーズごとに適宜変更すれば良い ので、最初から達成が難しい指標を課すのではなく、段階的に達成難易度を上げていくプランで構いません。商材や顧客単価などを考慮した上で、最適なコンテンツマーケティングのKGI/KPIを設計して、そのための戦略・戦術を考案する必要があります。
KGI/KPIの考え方については以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
②ターゲット設定
マーケティングの話では必ずと言って良いほど「ターゲット設定」が出てきます。コンテンツマーケティングも例外ではなく、コンテンツを届ける相手やコンテンツマーケティングによって顧客化したいユーザー像を明確に定めることが重要です。
ターゲットを漠然と定めた場合、本来コンテンツを届けるべき相手ではないユーザーの影がチラつくため、コンテンツ方針のブレや運用サイクルの崩壊に繋がりかねませんので、必ず準備段階で綿密に設定してください。
ターゲット設定の際は、サービス/製品(商品)を買ってほしい顧客の特徴を分かりやすくまとめた「ペルソナ」を活用することが多いです。理想の顧客像をペルソナとして設定することで、運用で迷った際に立ち返ることが可能です。
ペルソナを構成する要素は、大きく「統計的特性」と「ライフスタイル的特性」に分かれます。
統計的特性は、
性別 年齢 世帯規模(家族構成) 居住地 出身地 職種 所得 学歴
ライフスタイル的特性は、
趣味、嗜好 思考傾向 人生観、悩み 抱えているストレス 娯楽、食事傾向 ファッション傾向 交友関係 願望
などの項目で大まかな理想の顧客像を設定していきます。BtoBの場合は個人とは別で、企業規模や業態等の項目で構成された法人版ペルソナを併せて設定することも多いです。ペルソナでは1人の性格・感情・風貌が見えてくるくらい詳細に設定することが望ましいでしょう。
しかし、これだけではあまりにも現実味の無いペルソナでしかありませんので、ここからは実際に自社のサービス/製品(商品)を導入している・過去に導入していた顧客の声と照らし合わせていきます。
この段階では日頃から顧客とコミュニケーションをとっている営業に協力してもらい、日常的な電話・メール(チャット)・対面時のやり取りや、実際の営業現場に同行するなど、データ越しではない「リアルな顧客の声」を拾っていきます。
パーソナル特性に加えて、「なぜサービス/製品(商品)を導入したのか」「競合他社と比較したポイント」などの、より具体的な項目をヒアリングしていき、前述の統計的特性・ライフスタイル的特性に追加して最終的なペルソナを完成させます。
なお、ペルソナで重要なのは参考モデル群の中から「共通点」を見出す ことです。
ターゲット層の中に特異な特徴が見つかると、そのモデルにフォーカスしたペルソナを設定してしまいがちですが、大多数に共通するポイントを持つモデルの方がその何倍も企業寄りの顧客像ですので、ターゲット設定として好ましいでしょう。
③コンテンツマップの作成
コンテンツマップとは、前述の「顧客の購買サイクル」内の各フェーズごとに提供するコンテンツをマップ化したものです。予めコンテンツマップを作成することで、フェーズごとの提供コンテンツ・コンテンツの目的・発信チャネル等をチーム全体で定義化して、運用の一貫性を図ることが出来ます。
マーケティング戦略立案時によく用いられるカスタマージャーニーマップでは、サービス/製品(商品)を見込み顧客が認知し、様々な接点を経て興味・関心から購入までの一連のプロセスを図示したものです。一方、コンテンツマップはカスタマージャーニーマップをコンテンツマーケティング式に表したものであり、よりコンテンツと見込み顧客の接点にフォーカスしていることが特徴です。
下記はBtoB製造業の企業様のコンテンツマーケティング支援時に作成したコンテンツマップです。一部は加工しておりますが、その他は掲載の了承を得ていますので、参考にして企業ごとに最適なコンテンツマップを作成していただければと思います。
上記のように、顧客の購買サイクル内の各フェーズで設定したペルソナに対して、「どんなコンテンツを、どのチャネルで、どのように届けるのか」 が一覧になっていますので、運用改善時にコンテンツマップを起点にして「提供するコンテンツのテーマ(ジャンル)やフォーマットは正しいのか」「発信チャネルの変更・追加をすべきか」などを、即座にチーム内で協議することが出来ます。
また、セールス要件を追記しても良いでしょう。
④年間スケジュール作成・予算配分
ここでは、年間の必要タスク・コンテンツ制作/発信フローなどを明確に定めます。1年後の数値目標(アクセス数・コンバージョン数など)から逆算して、目標を達成するために実行する各月のアクションをスプレッドシートなどにまとめると良いでしょう。
年間スケジュールは、運用チームを結成する前に作成し、結成後に各タスクの担当者を決めて最終決定していきます。この段階でメンバーの目星をつけておくことはもちろん、一部業務を外部委託する際は支援会社やフリーランスも選定しておきましょう。
リソースの目処が立たなければスケジュール立て自体が難しいので、ある程度の割けるリソースを想定した上でスケジュールを作成してください。
また、一部業務を外部委託する際や、広告を活用する際に発生する費用などを予め算出し、適切に予算を配分することもプロジェクト責任者の仕事です。適切な予算配分を行い、運用途中で予算の枯渇なんてことにならないよう、あらゆる事態を想定して組み立てましょう。
⑤プロジェクトチーム結成
最後にメンバーを決定して、プロジェクトチームを発足します。
メンバー選定の際に最も大切なポイントは「コンテンツマーケティングに熱量を持って取り組めるか」 です。見込み顧客にとって本当に必要な情報を届ける情熱と意欲を持ったメンバーがチーム内にいるか否かで、コンテンツ品質や施策成果が大きく変わります。
「ライティング経験者だから」「業務効率が良いから」などの理由だけでメンバーに加えることは、あまりお勧めできません。決して精神論だけでどうにかなることではありませんが、コンテンツマーケティングは、それほど情緒的なマーケティング手法であるとも、私は考えています。
プロジェクトチームを発足した後は、予め作成していた年間スケジュールの中で行っていく各業務の担当者を決定していきます。「誰が、どんなコンテンツを、どのタイミングで制作するか」を明確に定めてください。
プロジェクトチームは多ければ多いほど運用自体はスムーズですが、人員制約を考慮すると責任者+担当者三名程度が現実的でしょう。外部リソースの活用も視野に入れてチームを構成してください。
また、小規模な会社の場合は、責任者兼担当者として一人で小さく始めることをお勧めします。一人で実行できるアクションは限られますが、施策幅が限定される分、効果測定がしやすいのでPDCAは回しやすいです。
異質なコンテンツが成果に繋がるポイント
いかなるマーケティング手法にも様々なテクニック論やメソッドなるものは存在します。しかし、その根底は自社とユーザーが接した際に、なんらかのポジティブな印象を与えようとする姿勢の上で成立し、コンテンツマーケティングも例外ではありません。
本記事内で何度もお伝えしている良いコンテンツ制作に情熱を注げるか が、コンテンツマーケティングの命運を握っています。あらゆる角度でコンテンツマーケティングを突き詰めたとしても、最終的にはこの結論に至るでしょう。
コンテンツがユーザーに評価されるためには、求めている情報をコンテンツ化しなければなりませんが、同じテーマの情報でもコンテンツを探す目的はユーザーによって異なるため、その目的を満たせる情報を提供する必要があります。
例えばコンテンツマーケティングについて検索行動を起こした際に、現在取り組んでいる施策が正しいのかを確認したいユーザーもいれば、自社で導入出来そうな新しい打ち手を探しているユーザーもいます。
この場合、前者は施策をピンポイントで網羅的に解説されているコンテンツを求めており、後者はコンテンツマーケティングの全体像が把握出来るコンテンツを求めています。検索キーワードも異なるでしょう。
ユーザーの目的や行動の裏に隠れている願望・思考を汲み取ってコンテンツに反映させる、マーケティング的に言えば「ユーザーインサイトを考慮したコンテンツ制作」を徹底追求します。「これで良いだろう」ではなく「もっと喜んでもらえるにはどうすれば良いだろう」と、一切の妥協を許さないあくなき貢献姿勢がユーザーの記憶に残るコンテンツ制作への近道です。
しかし、どんなに良いコンテンツを発信したとしても、ユーザーがコンテンツに触れてから行動を起こすまでには一定の期間を要することも珍しくありません。特にBtoBでは検討フェーズが長期化する傾向がありますので、初めて接するコンテンツで他とは違う「異質さ」 を感じさせることが重要で、良いコンテンツには欠かせない要素だと考えます。
「異質」とは文字通り、他とは異なる質のことですが、ここで言う「他」とは競合他社のサイトや同ジャンルのコンテンツを扱っているメディアなどを指します。何かを調べるため検索した際に「とりあえず上位のコンテンツをいくつか読んでみたがどれも似たような内容だった」という経験は誰しもあるのではないでしょうか。
この場合、数日後には閲覧した全てのコンテンツやサイトは忘れる可能性が高いでしょう。一方で、他と比較して深掘り度合いや解説内容の網羅性などが異質なコンテンツであれば、印象に残る可能性を高めることが出来ると考えています。
その異質さによる衝撃が、Webサイト再訪や企業との接点にポジティブな印象を与えるキッカケとなり、その後のコンテンツコミュニケーションが始まる合図の鐘です。鐘を鳴らすためにコンテンツを作り、鐘を鳴らし続ける ことでコンテンツマーケティングによる成果へ近付くことが出来ます。
異質なコンテンツを制作するためには、競合サイトが発信しているコンテンツを隈なく調査することで、打開の糸口が見えてきます。①競合サイトのコンテンツを読み込む②共通して足りないものを探し当てる③自社のコンテンツに反映する、の手順で進めましょう。
さいごに
コンテンツマーケティングは、誰でも始めることが出来るマーケティング手法です。良いコンテンツを制作して見込み顧客へ届けるシンプルな手法ではありますが、シンプルが故の難しさも兼ね備えています。
しかし、成果が出ない期間も諦めずに、見込み顧客を喜ばせるコンテンツ発信を継続すれば、中長期で見た際の事業貢献度は計り知れず、発信したコンテンツは企業の資産となります。その資産が更に事業・社員・を成長させ、コンテンツそのものが企業の文化になるでしょう。
それほどまでにコンテンツマーケティングによって得られるものは多く、様々な困難を乗り越えてでも取り組む意味があるマーケティング手法であると、私は考えます。本記事が少しでも多くの方の、コンテンツマーケティングに対する見方が変わるキッカケとなれば幸いです。
コンテンツマーケティングについて私たちにご相談ください
ルネイムでは、コンテンツマーケティングに必要な戦略策定・コンテンツ制作・運用コンサルティングと、企業のコンテンツマーケティングを包括的にご支援しています。また、単なるコンサルティングではなく、併走型で顧客企業と一緒にビジネス課題を解決するために奔走しているマーケティング集団です。
コンテンツマーケティングでお悩みの企業、良い支援会社が見つからなくて困っている担当者の方は、ルネイムまでお気軽にご相談ください。